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タヤカウ大国の第3公女として生を受けた。

すでに異母である兄が2人、姉が2人いて5番目の子供。

母は貴族豪族とは違い、商人の娘であったため、後継者争いにも歯牙にかけられず、公女とは名ばかりで王宮の端っこで静かに暮らしていた。

金髪に健康そうな褐色の肌が多い王族において、母似の焦茶の髪と日光に弱い肌色のユナは異母兄弟たちの中でも少し異質な存在。

だから、という理由を付けてあまり交流もせず、興味がある好きな本を読み更けていた。

去年に日頃の心労では身体を崩していた母が亡くなり、大した後ろ盾のない身としては今後の生活に不安を隠せなかった。

そこに来たのがこの縁談話。

父王自ら取りまとめられたと聞く、遠く離れた国の王族へ嫁ぐ。

いい厄介払いだわ、と異母兄弟たちに言われたが、『緑溢れる森林の国』という砂漠の国とは真逆の国に、少し興味が持てた。

第2王子への公妃だから、国を背負う程の重圧を受ける訳ではない。

でも大国の姫君として堂々とした態度を心がけなければと勉強してきた。

婚約者としてポイコニーにやっては来たが、全く気に入られなかったら婚約破棄もありうる。

それが一番避けなければならない項目。

母国に、戻る場所なんて無いのだから。

「大丈夫ですよ。姫様は眼鏡を外すと美人ですし、眼鏡でもかわいいですから」

にっこりとどんな髪型にしましょうかと髪を梳く侍女のサリ。

タヤカウからずっと一緒の4つ年上の幼馴染のお姉さんみたいな彼女。

「晩餐会は清楚系で攻めましょう」

ひとり気合いを入れ、変わらない彼女に、安堵の息をついた。