「彩夢!!」


急いで来たのだろうか…肩で息をしながら入ってきた


「こらッ玖賀!保健室では静かに!!」


「分かってるって、ハルちゃん」


呆れている春川先生を素通りして、こちらまで来た陸斗は私の頭を撫でた


「大丈夫か?階段から落ちたんだって?とりあえず、車呼んだから病院行くぞ」


その瞬間、ふわりと体が浮いた


「ちょ…!!大丈夫だよ、歩けるからっ!下ろしてよ」


そんな私の意見も聞かず、春川先生に「じゃ、俺ら帰るわ、サンキューな」と言うとそのまま外へ出る


恥ずかしくって陸斗の胸に顔を埋めて縮こまっていると一台の高級車が目の前で停まった


後部座席に乗り込むと見た事がない、厳つい中年男性が運転席にいた


「銀、急いで病院に行ってくれ」


「いつもの病院で良いですか?坊(ぼん)」


「あぁ。それと、銀……外でその呼び方で呼ぶなって言ってたよな?」


そんな会話をしてる二人は、チラリと一瞬だけ私に視線を向けた


「あぁ。スンマセン、つい…。じゃ、出しやす」


ゆっくりと発進した車の中で、二人の会話を黙って聞いていた



……坊って陸斗の事だよね…ーーーー気になる


物凄く気になっていたけど、とても聞ける雰囲気じゃなかった