毎年、夏未の家で花火をするのが結菜の楽しみだった。この田舎町では打ち上げ花火など見られない。しかし、手元に咲く美しい花に結菜は飽きることなく見とれてしまうのだ。

「おお、来た来た!待ってたよ〜」

夏未が家の前で立っていて、結菜に手を振ってくれる。結菜は「お待たせ」と笑った。そして「浴衣、可愛いね」と言う。夏未はえんじ色に梅の描かれた浴衣を着ていた。

「えへへ、嬉しい!お母さんに新しく買ってもらったんだよね〜。結菜ちゃんもよく似合ってるよ!」

こうして浴衣を褒め合ったりするのも最後だ。そう思うと、結菜の目の前が涙でぼやける。あと数日したら結菜はこの町から離れる。結菜と夏未に残された時間はとても短い。

「お母さんがスイカ切ってくれたから、それを食べてから花火しようよ!」

「うん!」

結菜と夏未は手をつなぎ、縁側へと座る。そして赤くて大きなスイカに互いにかぶりついた。夏未の家でとれたものらしい。新鮮なスイカは都会では味わえないだろう。結菜は一口ずつ大切に食べていった。