「That's why the manager of that back casino, which has abandoned multiple women with the same technique, has changed, so I got stuck on the throne. You already know that if you tell a delicious story because of your blindness, you'll have a good money, and you've been caught in that trap.
 (同じ手口で複数の女を廃人にしてる、あの裏カジノの支配人の座がコロコロ変わってるのもそのせいでその玉座にまんまと足を引っ掛けた。盲目を理由に美味しい話をチラつかせれば後はいい金づるの出来上がり、その罠に引っ掛かったって、あんたももうわかってるんでしょう)」

「Jean go early!
 (ジャン早く行って)」

「Milena!(ミレーナ!)」

「Shut up!(うるさい!!)」


 ミレーナの物凄い剣幕にジュリアンの影で肩を揺らす。


「Since I was a kid, I couldn't even dress up in a poor family, my father disappeared to escape debt collectors, and my mother worked like a carriage horse to protect me, my little brother and sister, and died on the street. I thought it was a shit world, I've always wondered why I should all die while making money! He found me at the bottom and pulled me up, I thought I was finally alive, what's wrong with that!?
 (子どもの頃から貧乏な家庭でおめかしの一つもできなかった、父は借金取りから逃げるため失踪し母は私や幼い弟や妹を守るために馬車馬のように働いて路上で息を引き取った。クソみたいな世の中だって思ってた、お金を稼ぎながらなんで私が、全員死ねばいいってずっとずっと思ってた! そんなどん底にいた私を彼が見つけて引き上げてくれたの、今やっと生きてるって思えたの、それの何がいけないの!?)」

「…ミレーナ」


 真実なんてどうだっていい、ってその時だけは聞き取れた。

 そこにいたのは確かに昨日裏カジノの支配人としてあの場所を牛耳り艶やかに微笑っていたミレーナと同一人物だったのに、丁寧に巻かれた髪やメイクを振り乱して涙する姿がまるでここにいるあたしと何ら変わらないひとりの女の子にしか見えなくて。

 思わず前に出た直後、彼女が壊れたようにほくそ笑む。


「… But it ’s okay. If you still say that it interferes with my peaceful life Julian, even you.
 (…でももういいわ。それでも私の平穏な生活を邪魔するって言うのならジュリアン、たとえあなたでも)


 ミレーナの銃口がジュリアンを捉える。


「Crush to the point of completeness.
 (完膚なきまでに叩き潰す)」


 銃声が鳴るのと同時に黒い影が横切り世界が一気に反転した。目を開くと眼前に腕を抱えたジュリアンが倒れ込んでいて、あたしたちをミレーナの銃口から遠ざけた(・・・・)背中が、


 硯くんが彼女に拮抗する様にやんわり顔を傾ける。


「It's not slow. It ’s just right, your mischief, clean up properly.
 (やだスズリ遅いじゃない。ちょうどよかったあなたの不手際よ、きちんと後始末して)」

「…」

「…Willing to betray me up to you.
 (あなたまで私を裏切る気)」