「おお、うまそう!!いただきます!!」

テーブルの上に並べられた和食に、次郎は頬を緩めながら食べ始める。母が「ちゃんと噛みなさいよ」と言った刹那に次郎は咳き込み、「見事なフラグ回収だな」と父が笑い出した。

「お兄見てると太郎兄の顔が同時に出てくる」

妹がそう言い、鮭を口に入れる。太郎とは次郎の兄だ。今は家を出て大阪でお笑い芸人になるために修行をしている。そんな太郎は次郎と見た目も中身もそっくりだ。

「そうね。太郎がいなくなっても次郎がいるから家はちっとも静かじゃないし」

母の言葉に次郎は「俺も高校卒業したらお笑い芸人目指そうかな。太郎兄とコンビ組む!」と言う。二人でお笑い芸人になればこの家はきっと騒がしいくらいになるだろう。

「二人がコンビ組んだら二人ともボケボケで収集つかないじゃん!」

妹の言葉に「ひどいわ、花子ちゃん!」と次郎は女子をイメージした高い声でおどける。しかし、「キモッ」と妹からは冷ややかな目を向けられてしまう。

しかし両親は笑い出し、笑顔で次郎の一日は始まっていくのだ。