「いやあ、なんかさ、伝説の勇者のぼるを騙る偽者が調子に乗ってるみたいじゃない? だからここは、俺がバシッと決めて、誰が本物の勇者かわからせようと思ってね! そうすれば、女の子にもモテて一石二鳥じゃないか!」


どうせそんな下心があるんだと思ってましたよ。


のぼるもいい加減わかれば良いのに。


ぜんっぜん勇者に向いてないって。


スライムにも勝てないへっぽこ勇者に、一体何が出来ると言うんですか。


「それよりも……コングデビルのうんこの匂いがしませんね? 2年は取れないって言われてたのに。一体どうやって取ったんですか?」


そう、あの異臭がしないのです。


こればかりは不思議で仕方がありません!


「え? そう言えば匂わないな。もしかしたら昨日、スライムを追い掛けてたら肥溜めに落ちたから、そのせいかもな!」


なるほど!


マイナス×マイナスはプラスってことですね!


「そんなわけないでしょ! と言っても、匂いがしないのは事実なのです。それどころかフローラルな香りすらしますね」


「お、俺に惚れてもいいんだぜぇ? ほれほれ、フローラルフローラル」


いや、元々はうんことうんこの匂いですよね、それ。


何がどうなってこんな匂いになったのか、ミステリーですよ!


「もう! 早く出ていってください! こんなところで油を売ってないで! 邪魔ですよ!」


本当にお仕事の邪魔だから遊び感覚で来ないでほしいです。


のぼるがいても、1Gの得にもなりませんから。


「チッチッ! わかってねえなあ。冒険に行く前に準備するのは当たり前だろう? 今日は……回復薬を買いに来たんだぜ!!」


な、なんですって!?


あ、あののぼるが……回復薬を!


「ど、どうしたんですか、冒険の準備だなんて……やっとまともな事を……はっ! もしかして熱でもあるんじゃ!」


のぼるがまともな事を言うなんて、きっとただ事じゃありませんよ!


慌ててのぼるの額に手を当てますが、大して熱なんてありません。