仄暗い部屋の中。
大きめの窓に映し出された夜景は、キラキラと輝いていた。
もう遅い時間だというのに車が何台も行き交っている。さすがは都会だ。

普段通勤で使っている、何百回往復したかも覚えてない道をこんな高いところから見下ろすのは、なんだか不思議な気分だった。

わたしは今、ベッドの前に立っている。
背後のソファにはイケメン風の男が腰かけていた。名前は知らん。

「たしかに、子供の体だね」

20代はすでに6年目の大ベテランである私に対して、男はそんなことを言った。寸胴を揶揄しているのか。許せん。

しかし当の私自身はというと、その時腹が立つ余裕も夜景を楽しむ余裕も一切なかった。なんせ男の前で肌着姿になるのは生まれて初めてのことだった。

「こっち向いて」

もはやどんな声色だったかも忘れたが、男がそう言った。
くるりとソファ側に振り返ると、男が何やら微笑んでこちらに近寄ってきた。いやいやいやいや待て待て待ってくれまだ心の準備が出来てないというかおそろしいというか待ってっていうかお前誰!!!!!!!!


もう諦めていた卒業を目の前に、わたしはこれまでの喪女人生を振り返る……余裕はやはりなかったが、せっかくなので振り返っていこう。