「楽しかったね?」

 出口に向かいながら、加奈は涼介に言った。


「ああ……いや、俺はそれは微妙だけど……」

 頷いて、すぐに涼介は首を傾げた。微妙というのは、ここが涼介にとって苦手な場所だからだろう。


 しかし、すぐに真っ直ぐ前を向いた。


「でも……来てよかったとは思う。ホントに」


「うん……」

 加奈は頷いた。

 確かに、楽しかったというよりは、来てよかったというほうが大きい。

 今日来なければ、涼介と加奈の距離が、こんなに近づくことなんてなかっただろう。


「また来ようね」

 加奈は笑顔で言った。


「えっ……ちょ……それは勘弁してくれ」

 涼介はかなり狼狽えた様子だった。


 予想通りの反応に、加奈は笑った。


「えー。来ようよー。そのうち怖くなんてなくなるよ?」


「無理だって……て、俺も乗ることになってんのか!?」


「当たり前でしょ! 涼介と一緒がいいんだもん!」

 加奈が言うと、涼介は目を丸くした。そして、次にため息をついた。


「お前……んなこと言うなよ」


「何?」


「乗らないといけなくなんだろ……」


 今度は加奈が目を丸くした。


「涼介……ありがと!」

 加奈は涼介の腕に抱きついた。


「か……加奈?」

 今まで見たことのない加奈の大胆さに涼介は驚きを隠せない。


「えへへ」

 笑顔の加奈を見て、涼介も照れ臭そうに笑った。


 今日は、二人にとって忘れられない一日になった。


 そして、二人の次のデートがまた遊園地だったことは、言うまでもない。