「あれ? 加奈が先? ナツの方が先に行ったのに……」
涼介と旬が待っている場所に行くと、旬が首を傾げて言った。
「う……うん」
何となくばつが悪い。
その奈津美に対して、悪態をついてしまったばかりだ。
「ごめん。あたし、外に出てるね」
「え?」
加奈はそこからも逃げるように店から出て行った。
最低……
加奈は一人でため息をついた。
これじゃあ本当にひがんでるだけになってしまう。
自分にないものを兼ね備えている奈津美のことを……
そんなつもりじゃない……こんなこと、したって何の意味もないのに……
加奈はもう一度ため息をついた。
「加奈」
息を吐ききったところで声をかけられ、加奈は息が止まってしまいそうなぐらいに驚いた。
声の方を見ると、涼介がいた。
「どうした? なんかあったのか?」
そう言われて、加奈はドキッとする。
昔から、涼介は鋭いところがある。
でも、今、どうしてなのかは、分かっていないようだ。
「別に……」
加奈は小さな声で返した。
いっそのこと、全部伝わってしまえばいいのに……
そうすれば、きっとこんなことで悩まないのに……
「何だよ? 何もないってことはないだろ? ……はしゃぎすぎて疲れたか?」
涼介は加奈の顔を覗きこむ。
「加奈は昔から色々溜め込むからな。しんどいなら言えよ」
そう言って、涼介は加奈の頭を撫でた。
それだけの言葉が、触れ合いが、泣きそうになってしまうぐらい嬉しかった。
「あ、今からゲーセン行くかって話になってたんだけど、どうする?」
「……うん。行く」


