「え……?」

「俺が、旬の代わりになれないか?」


 加奈は言葉を失った。


「俺……加奈のことが好きだ。加奈が旬のことを好きだって聞いても……それはずっと変わらなかった……」


 加奈は、気付いてなかった。

 そんな涼介の気持ちなんて……


 涼介にはずっと、旬のことに関しての相談をしていた。

 涼介は、その時、何の素振りも見せずに応援してくれていた。


「俺……加奈に落ち込まれてると辛いんだよ……加奈には、笑っててほしい。……俺がずっと加奈のことを笑わせるから……悲しませたりしないから! だから……俺と付き合ってくれないか……?」


 いつの間にか、加奈の涙は止まっていた。


 驚きと、何か、よく分からない感情で……


「な……何言ってんの!? そんなの、無理に決まってるでしょ! 涼介と付き合ったら……あたしズルイ女になっちゃうよ? 涼介のこと利用して付き合うことになっちゃうんだよ?」


 涼介のことは嫌いじゃない。

 でも、付き合えない。

 まだ旬への気持ちが吹っ切れてない。


 今、涼介と付き合うのは、加奈がその気持ちを紛らわすためのようになってしまう。


 そんなの、お互いを傷つけるだけで、間違ってる。


「別にいい。加奈になら利用されてやる。……それに、俺、頑張るから。絶対に、旬じゃなくて、俺でよかったって思われるようにするから!」


 そうやって言われて、加奈は涼介と付き合い始めた。