最初から、おかしいと思っていた。



「加奈。三日のことなんだけどさ……旬とその彼女と一緒でもいいか?」


 加奈はデートの一週間ほど前に、涼介に電話でそう言われた。


「何? どういうこと?」

 初め、何のことか分からずに加奈は聞き返した。


「昨日、偶然コンビニで旬に会ってさ、色々話してて、今度加奈と新しくできたとこ行くって話したら、旬も丁度彼女と行くところだって言ってさ……しかも同じ日に。だから、それなら一緒に行かねえかって言われて……旬と、旬の彼女と……そういうわけで……どうだ?」


 どうだ、と言われても、加奈には何と言っていいか分からない。

 でも、言いたいことは山ほどある。


 いくら旬とはいえ、何でいきなり一緒に行く流れになったのか……

 それも、加奈が、涼介だって会ったことのないはずの旬の彼女も一緒に。


 旬には暫く会ってないから、友達として、久々に会いたいという気持ちがないこともない。

 でも、涼介との久々のデートの日に重ねてまでそんな気持ちにはならない。


 涼介は違うのだろうか……

 久々だから、二人だけで会いたいとか、そうは思わないのだろうか……


「加奈…?」

 電話の向こうで涼介の窺うような声が聞こえて、加奈は我に返った。


「あ……うん。いいよ、別に」

 加奈にはそう言うしかなかった。


 涼介に言われて断れない。

 それに、今回のことは旬が言い出したらしいのだから、責めるにも責められない。


「分かった。じゃ、旬にも言って……時間とか、決めとくから」


「うん……」



 そうして加奈は、モヤモヤした気持ちを抱えたまま、デート当日を迎えた。