「本当によかった。ちゃんと、話できたみたいで……」

 二人が見えなくなると同時に、奈津美は落ち着いた口調で言った。


「うん」

 旬が静かに頷いて、奈津美の手に触れた。


「俺らも帰ろっか」

 そのまま指を絡めて旬が言った。


「う……」

 頷こうとして、奈津美の動きはは途中で止まる。


「ナツ?」


「そういえば旬。話の腰が折れたけど、あたしは許したわけじゃないからね」


「へ?」


「さっきのこと」


「えっ……そんな、ナツ……」

 旬の表情が情けなく歪む。


「……また今度、外で同じことしたら本当に怒るからね」


 元々怒るつもりではなかったのだが、旬の顔を見たらさらにそんな気は失せた。


 旬はすぐにほっとした表情になる。


「ナツー」

 そのまま感極まったという様子で旬は奈津美に抱きついてくる。


「ちょっと旬! もう! 言ったそばから……」


「へへっ」

 無理矢理引き剥がされながら、旬は笑っている。


「もう……帰るわよ」

 呆れながら、奈津美は吹き出してしまう。


「うん!」


 こうして、他人の恋の仲介という形になったWデートは幕を閉じた。