「だろ? これさぁ、ナツのおっぱいそっくりなんだよな。形とか。だからこうするとナツのおっぱいに挟まれてるみたいで幸せな気分」

 旬は二つのましゅまろんで両頬を挟み、至福の笑みを浮かべた。


「なっ……何言ってんのよ! こんなとこで……」

 奈津美の顔は真っ赤に染まっている。


「だって気持ちいいんだもーん。そりゃ、本物の方が俺は好きだけど」


「もう! バカ! 知らない!」

 奈津美は旬に背中を向けて離れていこうとする。


「じょっ冗談だって! これ、一個はナツのだから」

 旬は慌てて奈津美を追いかけて正面に回りこむ。


 そして、真っ白の方を奈津美に差し出した。


「……あたしの?」


「うん。俺とおそろい」

 旬がにっこりと笑った。


 ぬいぐるみと旬を見比べて、奈津美は思わず笑ってしまった。

 ぬいぐるみがおそろいで喜ぶのなんて、普通は女の子だけだ。でも、なぜか旬だと違和感がなかった。


「ナツ?」

 笑った奈津美に対して、旬は首を傾げる。


「……ありがと。旬」

 笑顔のままそう言って受け取ると、旬は更に満足そうに笑った。


「なあ、ナツ。あの二人のことだけどさ」

 旬がいきなり話題を変えて、ちらりと涼介と加奈の方を見た。

 奈津美もそっちに視線を向けると、二人はまた違うぬいぐるみに挑戦していた。


「大丈夫だよ。別に心配しなくても」

 続けて旬はそう言った。


「え……?」


「何か、気になってるみたいだったから」

 奈津美は目を丸くした。

 旬は、見てないようで結構みていたのだ。


「それに、俺に考えはあるし」


「考え?」


 奈津美が聞き返すと、旬はまた笑顔になるだけで、何も言わなかった。