ゲームセンターの中では、旬がクレーンゲームに夢中になっていて奈津美は数歩離れたとこから、それを見ていた。


 そして、涼介と加奈も、旬とは別のクレーンゲームをやっている。


 加奈がガラスケースの中のぬいぐるみを指さして、涼介がそれを取ろうとチャレンジしている。


 持ち上がったと思ったら落ちたり、隣のぬいぐるみが邪魔をしていたり、なかなか上手くいっていない。

 一体いくら使ったのかという何度目かの挑戦で、何とか穴にぬいぐるみが入った。


 涼介がそれを取り出し、達成感に満ちた笑顔で加奈に渡す。

 加奈は、それを受け取って、本当に嬉しそうに笑っていた。


 やっぱり、奈津美には信じられない。あんなにお互いがお互いのことを好きなのに、上手くいってないなんて……


 そんなことを考えていた奈津美の頬に、何か柔らかいものが触れた。

 振り返ると、旬が満足そうな笑みを浮かべてそこにいた。


「ナツ! 取れたよ!」

 なんだか誇らしげにいう旬の手には、二つのぬいぐるみがあった。


 何かのキャラクターというわけではなく、完全にオリジナルであろうそれは、円錐のような形をしていて、可愛らしい目と口がついていた。色は真っ白と薄い茶色だ。


 全体的にはまぁ、可愛いだろうというそれは正体不明だ。



「何? これ」


「ましゅまろん」

 奈津美が尋ねると旬はすぐにそう答えた。


「ましゅまろん?」


「そう。こっちがマシュマロ色で、こっちが栗色。すっげー触り心地いいんだ、ほら」

 旬は奈津美にそれを差し出す。


「ホントだ。気持ちいい」


 生地はサラサラしたもので手触りがよく、硬すぎず柔らかすぎない程よい弾力があった。


 よく見れば、このぬいぐるみの形は、円錐というより、栗の形だったのだ。それで、このマシュマロのような感触。だから『ましゅまろん』というわけだ。