「……旬。お前は幼稚園児か」

 これまでのやり取りをまん前で見ていた涼介が呆れたように言った。


 その声で奈津美はハッとする。

 目の前に涼介と加奈がいるのに、なんて恥ずかしいことをしてしまったのか……


 でも奈津美の性格上ほっとけないことだった。


「奈津美さん。こいつ、昔っからこうなんですよ。何するにも手がかかるっていうか」

 涼介が笑いながら言った。


「何だよ。その言い方。今は別にそんなことねえし」


「今はって、昔のは認めるのかよ。つうか、今の見てたら全っ然変わってねえだろ」


「変わったって。俺は日々進化してんだからな。なっ! ナツ」

 そう言って旬は笑顔で奈津美にふる。


「……さあ」

 奈津美は曖昧に返す。


 なっ! と自信満々に言われても、そうだねと言えるほどの変化があったとは思えない。


「ほら。やっぱダメなんじゃん」


「えー! 何でだよー。俺頑張ってるじゃん!」


「ホントに頑張ってる奴は自分で頑張ってるって言わないだろ」


「確かにそうよね」

 涼介が言ったことに納得し、奈津美は笑った。


「何だよー」

 口を尖らせる旬を見て、涼介も笑っていた。


 笑いながら、奈津美はふと加奈の方を見た。そう言えば、加奈はほとんど喋ってない。


 加奈と目が合った。

 加奈も奈津美の方を見ていたらしい。

 そしてその瞬間、加奈は奈津美をキッと睨んで、すぐに視線をそらした。


 ………え? 何? ……今、睨まれたの?


 この一瞬での奈津美の認識は、それぐらいだった。でも、確実に分かった。


 奈津美は、加奈に嫌われてしまったということが……