「……あたしが、旬のことをダメにしてたのかもしれない」

 思ったことを、そのまま口にした。


「あたしのことさえなかったら、旬は今頃、専門学校に行って、ちゃんと自分の夢に向かってたと思う。……せめて、あたしがもっと早く気付いてあげられてたら、こんなに長い間、旬に我慢させてなかったのに」


 本当に、情けなかった。旬のことを分かったつもりで、全く分かっていなかった。


 分かっていないくせに、旬の人となりを決め付けて、自分がいないと何もできないのだと自惚れて、甘やかしていたかもしれない。


 あたしは、一体旬の何を見て、何を知っていたのだろう。


 それを考えると、恥ずかしくてたまらなかった。





 そのまま午前中は仕事をこなし、昼休みにはカオルと社員食堂に向かった。


「……ねえ、奈津美。旬君のことってさぁ、旬君が自分で決めたことでしょ? 別に奈津美が責任感じてなくてもいいんじゃないの?」

 食券を買う列に並びながら、カオルが奈津美に話しかけた。


「うん……」

 奈津美が頷いたところで、奈津美に食券を買う順番が回ってきた。

 五百円玉を入れて、Aランチのボタンを押し、出てきた食券を取った。


「確かに旬が決めたことだけど……それでも旬は未練があるみたいだから……そんなの、いいわけないじゃない。もし旬がよくても、あたしが嫌なの」

 列から外れ、次に食券を買うカオルに答えた。


「……なるほどね」

 カオルは千円札を入れて、日替わりランチのボタンを押す。出てきた食券とお釣りを取って、列を外れた。


「確かに奈津美の言うことも尤もね。いくら自分のためでも、そんな一生を左右するかもしれないことを簡単に変えられたらね」

 奈津美は、カオルの反応に驚いて目を丸くした。