「……どうしてこんな道選んだの?」

 責めるような、こんな言い方はしたくなかった。

 しかし、口から出てしまうと、止まらない。


「整備士になりたいって夢、諦めたわけじゃないんでしょ?」


 今日、初めて旬が車が好きだということを知って、整備士という夢を知って、そんな気がした。

 車のことを話し、整備士という夢について語る旬は、今までに見たことのないくらい活き活きとして輝いていて……まだ心がそちらに残っているように思えたのだ。


「それは……」

 旬は、口をひらいたものの、それ以上の言葉が出てこないらしく、視線を奈津美から逸らした。


 その態度が、奈津美の言ったことを肯定したも同然だった。


「旬は……あたしのためだって言ったけど……そんなのちっとも嬉しくない」

 奈津美の目には、涙が浮かんでいた。


「あたしのために旬の夢を犠牲にされたって、嬉しくないよ!」

 声を荒げて言ったのと同時に、とうとう涙が零れ落ちてしまった。

 きっと無駄だろうが、奈津美は旬にそれを見られないように下を向いた。


 旬は奈津美を見て、何も言えない。

 今、何を言っていいのか、分からなかった。


「……お風呂、あたし先に入る」

 奈津美はそう言って立ち上がり、逃げるように脱衣所に向かった。