そのことを聞いた後、奈津美はただ呆然としていた。


「あっ……すみません! 奈津美さんにこんなこと言って……普通言うことじゃないですよね」

 涼介は今になって気付いたように慌てだした。


「ううん。それは別に……いいんだけど……」

 微妙な気持ちになりながらも奈津美は首を横に振った。


「でも……加奈ちゃんは涼介君のことが好きだから付き合ってるんでしょ?」

 奈津美が確認するように聞くと、涼介は寂しそうに笑った。


「分からないです。正直……今、ちょっと上手くいってないっていうか」


「そうなの? でも普通に話したりしてたよね?」


 涼介は、上手くいってないと言ったが、奈津美には信じられない。

 今日初めて二人に会って、話したり隣に並んで歩いているところを見たが、二人はどこからどう見ても仲のいいカップルで、上手くいってないようになんて全く見えない。


「会ったら案外普通にできるんですけど……でも、加奈はどう思ってるか……」


「どういうこと?」


「最近……ていうか、大学に入ってからあんまり会えてないんです。学校違うし、お互い忙しくて都合つかなくて、連絡もあんまりしょっちゅう取れなくて……今日の前に会ったのなんか春休み中で、もう一ヶ月ぐらい前だし……だから、加奈に寂しい思いさせてるんじゃないかって思うんです。……でも、加奈は結構平気そうだし……」


 話しながら、涼介の声のトーンが落ちていく。


「なんかすみません。男のくせに、グチグチ言って……」

 落ちたトーンのまま涼介は奈津美に対して謝る。


「ううん。それは別にいいんだけど……」


 こんなに落ち込んで……真剣に悩んでいる。

 それも、普段あまりこういうことを他人に話したりもしないんじゃないだろうか。

 だからこうして、一言言うと芋づる式に出てきてしまうのだ。