ピンポーン……

 インターホンの音が鳴って、奈津美はガバッと起き上がった。


 時計と見ると、ぼやけた涙で視界だったが時計の長針と短針が十時過ぎを差しているのが分かった。


 奈津美は慌てて目元を拭いながら、玄関へ向かった。

 玄関でドアスコープを覗いて確認すると、そこには待ち望んだ旬の姿があった。


 奈津美はドアチェーンを外し、鍵を開けた。


「旬っ……」


 ゴンッ!


「イテッ!」

 勢いよく開けると、予想外の音と声がした。


「え!? 旬?」

 奈津美は驚いて、ドアの向こうにいるはずの旬と見た。

 旬は丁度開いたドアの裏にいて、額を押さえている。


「あ……ナツ。何の音もしなかったから、居ないのかと思った。これ覗こうとしたら開いたからビビッたー」

 旬は苦笑混じりに言って、ドアスコープを指さした。


「ごめんね……でも旬、外から覗いても見えないわよ」


「知ってるけどさー。気持ちじゃん?」

 そう言って旬はヘラッと笑った。


 奈津美もつられて笑った。


「入って。……旬、来るの早かったね。もうちょっと遅いのかと思った」

 部屋の中に促しながら、奈津美は言った。


「うん。終わってソッコー来たから。ちょっと走っちゃった」

 靴を脱ぎながら旬は言う。


 ふと見て見ると、旬の額から頬にかけて、汗が流れていた。


「旬……そんなに急がなくてもよかったのに……バイトで疲れてたでしょ?」


 まして、昨夜から満足に休めたわけではないはずなのに。奈津美は少し罪悪感が生まれる。


「全然! ナツに会えると思ったら余裕だし。それに、ナツに会いたいって言われたら空だって飛んでこれるよ」

 旬のその言葉に、奈津美は思わずふき出す。