何だかお腹がいっぱいだ。


 奈津美は箸を止めてため息をついた。


 朝も昼も少量しか食べてないので、多少の空腹感はある。

 だけど、いざ食べると胃が受け付けない感じで、食べられない。


 もういいや。残そう。旬が来たら食べるかもしれないし。


 奈津美はもう片づけをしようと思って、食器を盆の上に乗せた。


 時計を見てみる。まだ七時過ぎだ。


 旬が来るまで、まだ三時間もあるのか。

 そう思うだけで気が重かった。


 これなら、カオルと一緒にご飯を食べに行った方がよかったかもしれない。

 そしたら気が紛れていただろうし、無理矢理にでも何かちゃんと食べていたかもしれないのに。


 と、思ってから奈津美は自己嫌悪に陥る。


 せっかくカオルが誘ってくれたのを断っておきながら、なんて自分に都合のいいことを考えているのだろう。


 余裕の無い時ほど自分の嫌なところが見えてくる。一人でいるから尚更だ。


 どうしようもない感情に押しつぶされそうになりながら、奈津美は悶々としていた。




 奈津美は、食事の片づけをしたり、昨日ほったらかしにしていた洗濯物を畳んだり、風呂に入ったり、比較的いつも通りの過ごし方をした。


 それでもしきりに気になるのは時間ばかりだ。今やっと九時を過ぎた。


 もうすることをしつくしてしまった奈津美は、ベッドにうつ伏せに倒れこんだ。


 今日は、時間が流れるのが遅いように感じる。こういう時は、そういうものだ。


 あたしって、こんなに弱かったんだ。前はここまで弱かったっけ。


 奈津美は、自分ではそこまで弱いとは思っていなかった。

 自分でなんとかすることは何とかしていた。物理的なことも、精神的なことも。


 それなのに、今では旬がその一部になっていて、その一部がないと、ほとんどの機能を失ってしまったかのようだ。


 旬が居ないと、奈津美も成り立たなくなる。


 弱いなぁ、本当に。


 思わず涙が浮かんで、奈津美はぎゅっと目を閉じた。