奈津美には分かった。

 どうして、高所恐怖症なのにこんなところにきたのか。

 それは、加奈に対する涼介の想いだ。加奈のために、本当なら苦手なところに来た。


 涼介は本当に加奈のことが好きなのだ。奈津美にも伝わってくる。


「今日、旬と奈津美さんと一緒に来てもらったの、俺が旬に頼んだからなんです」


 ここで涼介は今回、Wデートを企画した真相を話し出した。




 数日前、加奈とのデートが決まり、一人焦りながら、コンビニで雑誌を立ち読みしていた。

 それは所謂地域情報誌で、ここのアトラクションにどのようなものがあるかを下調べしてたわけだ。


 やはり、絶叫系は自分の限界を超えるものばかりだと知り、愕然としていた。


 その時だった。


「あれ? 涼介じゃん」

 聞き覚えがある声がして、その方を向いた。

 そこには、旬がいた。


「やっぱり。久しぶりだなー」

 旬は買い物を終えた後らしく、袋を持っていて、懐かしそうに言った。


「おう、旬。久しぶり」

 涼介も懐かしく、そんな挨拶をした。


「全っ然会わねぇからなぁ。大学どうよ?」


「ああ。まあまあだな。お前は?」


「俺もまあまあバイト生活がんばってるかなー」


「それ頑張ってるって言えるのか?」

 頼りない返事に涼介は笑った。


「頑張ってるっての。一応生活かかってるんだからな」

 胸を張っているが、胸を張っていいことなのか……