旬の電話が切れてすぐに、公園が見えてきた。


 そういえば……ここを横切ったら旬のマンションへの近道になると、旬が言っていたような気がする。


 奈津美は、この公園は夜には入ったことがない。

 外から見ると、電灯が少なくて、暗い。中に何があるのか分からないので、旬と一緒でも通ったことはない。


 今日だって、その様子はいつもと変わらない。


 だけど……ここを通れば、旬のマンションへはすぐだ。

 旬のマンションまで辿り着ければ、何とか助かるはずだ。

 それに、旬が急いで来るのなら、こっちを通るのかもしれない。


 そう思ってもやはり不安でためらった。


 だけど……広い公園だけど、横切るの十分もかかるわけではない。

 走って横切ればきっとすぐだ。


 奈津美はお守りのようにぐっと携帯を握り直し、公園に入った。




「あれ……!?」

 旬は思わず声に出した。


 奈津美に会うことなく、奈津美のコーポへ着いてしまった。


 何で……まさか部屋出てなかったわけじゃ……


 息を整えながら、旬はエントランスに入った。


 階段に向かおうとして、ふと郵便受けの方が目に入る。


 郵便受けの下から三段目の一つが開いたままになっている。


 確か、奈津美の郵便受けもその辺りだったはず。


 旬の目線は、地面へと向く。

 そこには、色々なものが散らばっている。


 しゃがんで見ると、最初に目に入ったのはダイレクトメールの宛名だった。


 そしてその近くに落ちていたものを見て旬は目を丸くする。

 大量の奈津美の写真だ。その中には……旬とキスをしている写真もあった。


 どういうことか全く知らなかった旬でも、奈津美が言った『ストーカー』という言葉を絡めて考えれば、これがどういう写真か分かった。


 そして、旬の目は、一枚の猥褻な写真が目に入る。


 こんなものがここにあるということは……


「ナツ……!」


 旬は立ち上がって、すぐさまコーポを飛び出して今来た道を引き返した。