旬は電話を切ると、言った通りにすぐに部屋を飛び出した。


 奈津美が何を言おうとしていたのか、はっきりといって、要領を得なかった。


 しかし、奈津美の身にただならぬことが起きているのはすぐに分かった。

 それに、奈津美の言った『ストーカー』という言葉……


 嫌な予感がする。


 旬は走る足に焦りを交えて、コーポへと向かった。



 旬のマンションから奈津美のコーポへ行く途中に、広い公園がある。

 旬はそこに差し掛かった。


 ここを横切ったら、奈津美のコーポへの近道になる。

 いつもなら、ここを通っていく。


 しかし、今日は少し迷った。


 以前に、奈津美とこの辺りを歩いた時に、ここは近道なのだと言ったことがある。

 それで二人で通ろうとしたのだが、奈津美は怖いから嫌だと言ったのだ。


 確かに、この公園は昼間は多くの子供達が遊んでいて、ごく普通の公園なのだが、暗くなると公園自体に電灯が少ないので薄気味悪い感じもする。

 旬は平気だが、奈津美が怖いと言うのも分かる気がした。


 そんなことがあったから、そして、今の奈津美の状況を考えたら、奈津美はきっと一人でこの公園を通らない。


 そう思って、旬は奈津美が通るであろう回り道の方に決め、また足を速めた。