「……まあいいや。じゃあ新しい番号とアド教えて」


「うん。ちょっと待って。今メールで送るから」


「あれ? でも新規で買ったんだったら、今まで登録してたのって写されないんじゃないの?」


「うん。でも、メモリーカードに入れといたから、大丈夫。それに、手帳にも控えてるから。――送ったよ」


「へー。ナツってマメだなぁ。あ、来た」


 旬の携帯から、初期設定の味気ない着信音が鳴って、旬は携帯を開いた。すぐにメールを確認し、奈津美の新しい番号とメールアドレスを見る。


「……あれ? ナツ、前とアドそんなに変わらなくない?」

 旬は登録してあった奈津美のアドレスと、変更した奈津美のアドレスを見比べて言った。


 奈津美のメールアドレスは至ってシンプルで、名前と誕生日の数字が並んでいるだけで、シンプルなまま、目立った変化は見られない。


「……ん?」


 じっと見て、違うところがあるのに気付いた。


 前の奈津美のアドレスは、奈津美の誕生日の1030のあとにすぐアットマークがきていたのに、新しいアドレスには、さらにドットで続いて、1122の数字がくっついている。


「ナツ……これって、俺の誕生日?」


 旬が目を丸くして奈津美を見ると、奈津美はすぐに真っ赤になった。


「そっ……それはっ……名前は流石に入れられないけど……誕生日くらいなら入れてもいいかなって思って……」

 目を泳がせながらしどろもどろになって奈津美は言い訳する。


 旬の視線がものすごく痛い。


「嫌なら変える! すぐ変えるから!」

 奈津美は再び携帯を開いて操作しようとする。


「ダメダメ! 変えなくていい! 変えたらダメ!」

 旬は慌てて奈津美の携帯を押さえた。


「もー……ナツってばやることなすこと全っ部可愛いんだからなぁ」

 旬はデレデレと鼻の下を伸ばしながら言う。


「よし! 俺もアド変ーえよ」

 旬はニンマリと笑って自分の携帯を開いた。


 何となく、嫌な予感がしたが、奈津美は旬が慣れた手つきで携帯のボタン操作をしていくのを見ていた。