休日ということもあってか、開店直後のはずなのに、そこそこの客が入っていた。
奈津美と旬はそれぞれ整理券を取って順番を待つ。
「ねえ、旬。あたし、携帯どれにするか決めてないの。見ててもいい?」
奈津美は店の真ん中にある携帯端末の見本のディスプレイを指さして言った。
「いいよー。ってか、決めてなかったの?」
旬は目を丸くしている。
そりゃそうだろう。携帯を変えようとしているくせに、機種を決めていない人なんてそうないだろう。
「うん……ちょっと、急だったから」
奈津美は昨夜衝動的に決めたことだったので、今どんな機種があるのかとか、どれがどんな機能があるのかとかは分からないままだったのだ。
「ふーん。そっかぁ。じゃあ早く決めないとな」
「うん」
それぞれの機種を眺めながら、奈津美はどれにするかを考えた。
「ナツ、今のと同じやつにするの?」
旬が言っているのは携帯の機種別のメーカーのことだ。
「どうしようかなぁ」
そう言いながら、奈津美は今の機種と同じメーカーのものを探す。
そのメーカーで最新機種を見つけたが、なんだが微妙だった。
スリムではあるが、いかつい感じのデザインで、色も黒と白とオレンジと緑で、どちらかというと男性向きな感じだ。
機能は特にこだわらない。
今のものでさえ、使わない機能のものが多いので、とりあえず最低限の機能さえあればいい。
他の機種を見回し、ふと目についたものを手に取った。
色がピンクで、一目で可愛らしいという印象が持てた。
それでもシンプルで軽く、開いてみて、手にフィットする感じで、なんだかしっくりときた。