「ごめんね。お待たせ」
玄関に戻ってきて、すぐにパンプスを履いて外に出る。
「ううん。全然」
玄関の扉を閉め、鍵もしっかりとかけ、ドアノブを回してちゃんとかかっているか確認する。
ここまで気にするようになったのは、ストーカーが現れてからだった。
「行こっか」
「うん」
旬が奈津美の左腕の内側に手を入れ、そのままスルッと奈津美の手に滑らせて指を絡めた。
いつもの何気ない仕草だけれど、何だかとても落ち着いた。
コーポを出ると、奈津美は辺りを見回した。
誰かに……ストーカーに見られてるのではないかと、警戒していた。
「ナツ? どしたの?」
奈津美の様子に旬が首を傾げた。
「ううん! 何でもない。何でもないの」
奈津美は大きく首を横に振って、笑ってみせた。
ちゃんと笑えているかどうかは、分からない。
「そう?」
旬はやはり不思議そうに首を傾げた。
「うん。行こう」
今度は奈津美の方が強く旬の手を握り、歩き始めた。
何があっても、この手を離さなければ、きっと大丈夫だ。