「ナツ……可愛いー!!」

 旬が思い切り奈津美に抱きついた。


「ちょ……旬っ!」

 驚いて腕の中でもがき、力が緩んだと思ったら、唇を塞がれていた。


「……久々のナツだあ……」

 唇が離れると、背中と腰に腕を回し、ぴったりと密着するほどに抱き締めて旬が言った。


「旬……」

 肺いっぱいに旬の匂いが入ってきて、奈津美も落ち着いていた。



 無意識に奈津美も旬の背中に腕を伸ばそうとしたが、すぐに今の状況に気付く。

 玄関を開けっぱなしの半分外だ。


「旬! ちょっと離して! 誰か通るかもしれないから」


「大丈夫だよ。誰もいないから」

 そう言って旬は離そうとしない。


「だから! いつ誰がくるかわからないしっ……誰が見てるかも分からないんだから……」


 そう、どこの誰が見てるかも……


 自分が思ったことに、奈津美は固まった。


 この状況も。ストーカーに見られてるのかもしれない……?


「ナツ?」

 急に動かなくなった奈津美を不思議に思って、旬は腕の中の奈津美を覗く。


「……ちょっと待ってて。今、鞄とってくるから」

 奈津美は旬の腕から離れて、部屋の中に入った。


 リビングに用意していた鞄を取り、家中の窓の戸締りを確認し、大きな窓のカーテンはしっかりと閉めた。

 三階で、周りは住宅街なので三階以上の建物はないが、念のためだ。