「うーん。そりゃそっか」

 旬の返事としてはすっきりしなかった。


「それではお気をつけて。いってらっしゃーい!」

 係員の明るい声と共に、前へと動き始めた。


「お、動いた!」

 そういう旬はいつもの様子……いや、いつもより楽しそうだった。


 ガタガタと音をたて、急斜をのぼっていく。


「おおー! ここが一番緊張するよな!」


「うん」


 確かに緊張する。奈津美は緊張している。

 だがやっぱり旬は笑っていて、緊張してるのか、それともその緊張感を楽しんでいるかのように見える。


 ガクンッ……と体に衝撃が走り、一瞬体が浮いた。


「きゃああぁぁぁぁーーーーーー!」


 暗い空間の中、悲鳴が響きわたった。