「意外とすっとぼけたところがあるのよねー。まあ、完璧すぎるのも面白くないからいいんだけどさ」


「……カオルって、塚田さんのことまでそんな風に見てるの?」


 普段、奈津美と旬の話を面白いと言うカオルだが、まさか彼氏のことまでそんな風にいうとは。


 何となく同情してしまう。


「そりゃ面白くないよりは面白い方がいいでしょ。その方が飽きないだろうし。でも、大丈夫よ。旬君だって十分面白いから」


「大丈夫って……何が」


「柏原さん」


 奈津美の後ろから、声を掛けられた。


 振り返ると、そこには同じ部署の、今年入社した二人の男性社員がいた。


 今年入社で後輩ではあるが、奈津美やカオルは短大卒で入社しているのに対し、彼らは四年制の大学卒で入社しているので、同い年である。


「何?」


 飲み会の時ぐらいしか話さないのに、こんな昼休みに話しかけてくるなんて珍しかった。


「あの、いきなり失礼だと思うんすけど。柏原さんって、お姉さんとかいます?」


「え……? いないけど……あたし、一人っ子だから」

 質問の意図が分からないまま、奈津美は答える。


「そうなんすか……」


「あ、じゃあ、夢咲まいみって知ってます?」

 もう一人が口を開く。


「え?」


「おい!」

 首を傾げる奈津美を余所に、今質問した方は肘でつつかれていた。


「何? 誰って?」


「いやっ、分からないならいいんです。すんません。気にしないで下さい」


 奈津美はわざわざ聞き返したのに、そう言って、二人はそそくさとその場を去っていった。