「なーに? ニヤニヤしちゃって」

 そう言いながらカオルはニンマリと笑っている。


「べっ別にニヤニヤなんてしてないわよ!」


「まーた旬君のことでも思い出した? 旬君、奈津美のこと見て『可愛いー!』て抱きついてきたんじゃないの?」


「なっ!?」


 何で分かるの!? と思わず言いそうになった。


「ふ〜ん……そう。やっぱりねぇ」

 何もかもを見透かしているかのように、カオルは何度も頷いた。


「何がやっぱりなのよ! あたしは何も言ってないでしょ!」


「顔見れば分かるわよ。奈津美もすぐ顔に出るから」


「そんなことないわよ! しかも奈津美『も』って何なのよ」


「そりゃ、旬君を筆頭にってこと。いいじゃない。似たものカップルで」


「旬と一緒でも嬉しくない」

 奈津美はふいっとそっぽを向いた。


「照れない照れない。本当は嬉しいくせに」


「嬉しくないってばー!」


 ついムキになってしまうが、全く嬉しくないといったら嘘になる。


 自分でも複雑だと思うぐらい、微妙な心境だった。