「ダメ……?」

 奈津美の反応が良くないからか、旬は不安そうに尋ねてくる。


「ううんっ」

 旬には見えてもいないのに、奈津美は必死で首を横に振った。


「来てもいいよっ。あ、旬、ご飯まだよね?」


「うん」


「じゃあ、用意しとくね。一緒に食べよ」

 いつもの旬のように、奈津美は明るく言った。


「うん。ありがと、ナツ。んじゃ、今から行くから」


「うん。待ってるね」


 電話を切ると、奈津美は台所に戻る。


 やっぱり、何かあったんだ。


 もし旬が、旬のマンションまで行って、そこから引き返してきたとしても、こんなに時間はかからないはずだ。


 それに、いつもの旬なら、一度帰りかけてから戻ってくるなんてことはしない。


 奈津美と一度別れてから、何があったのだろうか。そして、それを奈津美に話してくれるのだろうか……


 もしも話してくれないのなら、今度はこっちから聞いてみようか……