二人は、歩いて近くの公園まで来た。


 あのままマンションの前で話し込むのは落ち着かないし、旬の立場的に部屋に上げるわけにもいかない。


 そうなると、思いつくのは公園しかなかった。


 もう6時前という時間だからか、遊んだりする子供の姿は見えなかった。


 公園にたった二人だけで、やけに静かだった。


「なんか、懐かしいな」

 ミキがぽつりと呟いた。


「え?」

 旬がミキの方を向くと、ミキの口元には、僅かな笑みが浮かんでいた。


「旬、覚えてる? 私達が付き合い始めた時のこと」

 旬の方は見ずに、公園全体を見渡しながら、ミキは言った。


「ここじゃないけど、あれも公園だったよね。時期も丁度今ぐらいで」


「……うん」

 旬は静かに頷き、その時のことを思い出そうとした。


 確かあの時は、何か、偶然のことでミキと一緒になり、二人で帰っていた時だった。


 高校から最寄りの駅に行くまでに、公園があった。

 通学路ではないけれど、近道として、この横切って帰る。


 この時の旬とミキもそうで、この公園を通っていた。


 ミキから告白されたのは、その時だ。


 どうしてその話の流れにかったのかも、記憶が曖昧になっている。


 人の記憶とは意外といい加減なものだ。

 旬だって、ミキと付き合っていた時は、ミキに告白された時のことなんて、わざわざ思い出そうとしなくても、はっきりと覚えていたはずだ。

 どれだけ経っても、忘れるはずのないことだと思っていた。


 それなのに、今は少ししか覚えてない。


 これは、ミキへの気持ちの薄れを表しているのか。

 それとも、自分のいい加減さが原因なのか、旬には分からないことだった。