待ってた? 俺を?


 ミキが言ったことに旬は混乱してしまう。


「電話とか、メールにしようとも思ったんだけど……でも、やっぱり直接話したかったから」

 ミキはもう一度、しっかりと顔を上げた。じっと真剣な目で旬を見上げている。


「少し話せないかな? 本当に少しでいいから……もう、これで最後だから」


 泣き出しそうにも見えるミキの顔を見て、旬はすぐには返事はできなかった。


 まず頭に浮かんだのは、奈津美の顔だった。

 こんな場面を見たら、こんなことを知ったら、奈津美はどう思うだろうか。また嫌な思いをさせて、傷つけてしまうだろうか。


 彼女がいる身で、今まで連絡も取っていなかった元彼女と二人きりで会うなんて、非常識だろうか。


 でも、目の前のミキを放っておくこともできなかった。


 それに、別れる時も、電話で話しただけでで、ミキとはきちんと話していないのだ。


 今更かもしれないが、ここで話をつけるべきかもしれない。

 そしてそうすることで、今の中途半端な状態も、解消できるような気がした。


 だから、今日だけ……


「うん……分かった」


 これが最初で最後だからと、何度も言い聞かせ、旬は頷いた。