「へー。すげーな。女の人の勘ってやつ?」

 旬は奈津美の言ったことに特に疑問も感じなかったらしく、むしろ感心したように言う。


 そうして旬は、再びパフェを食べ進める。


 何だか、意外にあっさりとしているようだ。

 ミキの話題を出した時には驚いていたような気がしたけれど。


 考えてみれば、今の彼女から前の彼女の話が出れば、動揺してしまうのが普通だ。

 だから、これで自然なはず。


 でもどこか不自然な感じもする。


 何が不自然なのか、どうしてそう思うのかは、分からないけれど。



「……ねぇ」


「ん?」


「何で別れたの?」


 奈津美が聞くと、旬はスプーンをくわえたまま固まった。


 ここまで聞かなくてもいいとは思っている。

 旬にだって色々あるだろうし、あまり突っ込まない方がいいだろう。


 それに奈津美自身のためにも、聞かない方がいいんじゃないか。

 そう思ってはいるのに、聞いてしまった。


「なに? ナツ、気になるの?」

 旬が口元にわずかに笑みを浮かべた。


「きっ……気になるっていうか……その……」

 そう聞き返されると、言いよどんでしまう。


 確かに、気になるから聞いてしまったのだ。

 そのくせ、いつもの奈津美の性格で、素直に気になるとは言えない。


「ミキには……さっきの元カノにはさ」

 奈津美の返事の前に、旬が言葉を紡ぐ。


「俺、振られたんだ」

 旬は、奈津美の方は見ずに、パフェをスプーンでつつきながら言った。


「俺が、バカだったから」


 そこまで言って、旬はもうそれ以上は話そうとはしなかった。


 奈津美ももうそれ以上は聞くことが出来なかった。