「美味しい?」
旬が尋ねてくる。
「うん……」
奈津美は素直に頷いた。
お好み焼きは、すっかり冷め切っていた。
しかし、元がよいものだというのと、久々の数日ぶりの油もの解禁と、今の空腹の状態があってか、とても美味しく感じられた。
「だろ?」
旬はそれを見て満足げに微笑んだ。
箸を器に置くと、右手を奈津美の肩に回し、抱き寄せる。
「俺はさ……ナツがいくら太ってもいいんだよ」
旬は奈津美の肩から腕を撫でながら口を開いた。
「ナツは細くて、綺麗で……それも好きだけどさ。でも俺は、ナツと一緒に同じものを食べて、同じものを美味しいねって言ったりする時の方が好きだよ。そっちの方が俺は楽しいし、ナツも楽しそうだから」
奈津美は、旬のことを見た。
旬は、奈津美を見てニコッと笑うと、言葉を続ける。
「ナツがダイエットして、食べるの少なくしちゃったらさ、俺の楽しみがなくなっちゃうの。だから、ナツが太っちゃうよりも嫌だよ」
奈津美は、目を丸くした。
旬が、そういう風に思っていたなんて。
奈津美がしようとしていたことは、本当に、自分だけの都合で、旬の為には全くなっていなかったということだ。
「旬……ごめん。……ごめんね、本当に」
奈津美は、旬の肩に頭を乗せ今一度謝った。
さっきの『ごめん』は昨日の言動についてだが、今の『ごめん』は、旬のことをちゃんと考えていなかった、奈津美の勝手な思考についてだ。


