四月末のこと。

 それは、旬の一言が始まりだった。



「なあ、ナツ。ゴールデンウィーク中のことだけどさー」

 奈津美の部屋にやってきた旬が、話を切り出した。


「ナツ、ゴールデンウィーク中は何連休?」


「え? 特に有給もとってもないし、カレンダー通りに仕事行って休みだけど……」
 旬の質問に、奈津美は予定のままを答えた。


「じゃあ、五月の三日は、休みだよな?」


「うん」


「予定もない?」


「うん。今のところは……旬、どうしたの?」

 いつもと違う旬の態度に、奈津美は首を傾げた。


 この話の流れだと、ゴールデンウィーク中にデートをしようとか、そういう話題だと思う。

 しかし、いつもなら単刀直入にデートしようだのどこに行きたいだのを言う。なのに今日の旬は回りくどい。


「え……いや、そのデートしたいっていうか、行きたいとこがあるっていうか……」

 やっぱり旬が言いたがっているのはそのことだ。でも、なぜか歯切れの悪いままだ。


「どこ?」

 奈津美が尋ねると、旬はジーパンの尻ポケットから小さく畳まれた紙を取り出し、広げていく。


「ここなんだけど……」

 旬が出したのは雑誌か何かの切り抜きだった。

 奈津美はそれを見てみる。


「あ、ここ知ってる」


「ホント?」


 切り抜きに載っていたのは、ある遊園地だった。

 しかも、最近有名になってきた大規模の施設だ。


 そこは元々は、子供向けのアトラクション中心の小規模なものだったらしい。

 しかし、現在次々とキャラクターのテーマパークや絶叫系アトラクション中心の遊園施設が増えていく中で、売り上げは大幅に低下。一時は風前の灯だった。

 その打開策として、絶叫系アトラクションの大量導入を試みた。それもスピードや高さを国内上位のものを増やした。

 すると、それが高じたのか、売り上げは鰻上りで、現在では子供から大人まで楽しめる遊園地として名を馳せているのだ。


 奈津美も、先日その特集をテレビで見たところだった。