「太ったって……ナツ?」

 ポカンとしながら、旬は奈津美を見る。


「どこが? 全然じゃん」

 見る限りでは、旬には、奈津美の体の変化なんて分からなかった。


「太ったの!」

 奈津美は顔を上げた。


「去年まで履けたはずのスカートが履けなくなっちゃったし、カオルに顔丸くなったって言われたし……それに体重が……半年で四キロも増えたの!」

 何故かムキになって、奈津美は旬に全てを暴露した。


「そーなの? ……でも何でそれでエッチ拒否ったの?」

 旬には、そのことが何で関係あるのか、奈津美の複雑な気持ちが分からなかった。


「だって……嫌だったから……」

 再び下を向いて、奈津美は小さな声で言った。


「旬に……太ったってバレたら……太ったって思われたら……嫌だったの。だから……痩せるまではって、思って……」


 旬は、呆然としていた。昨日の言動の理由を、やっと知ることができた。


「な……なんだぁ……」

 一気に脱力して、旬はその場にうつ伏せに倒れ込んだ。


「そんなことかぁ……」

 旬はほっとしたようにため息をついた。


「そんなことって……あたしにとってはそんなことじゃないもん!」

 真剣に悩んだことじなのに、そんなこと、と言われた。

 奈津美はムッとして言い返す。


「だってさ、ナツ、別に太ってなんかないよ? むしろ折れちゃいそうなぐらい細いじゃん」

 旬は体を起こしながら言った。


「そんなことないもん!」

 奈津美は一切引くことなく言う。


「……何でそんな否定するかなぁ」


「本当のことだからしょうがないでしょ」

 いつになく頑なな奈津美を見て、旬は小さく息をついた。


「んじゃ、確かめてみよっか」

 旬はそう言って、立ち上がった。


 何なのかとビクビクしながら、奈津美は旬を見上げた。