「な……なんかテレビあんまり面白くないね」

 何気なく言おうとしたら、少しわざとらしくなってしまった。


 旬は、奈津美の声ではっと我に返る。


 奈津美はテーブルにグラスを置き、テレビのリモコンを取る。


「もう消しちゃおっか」

 そう言って、奈津美は旬の返事がある前に、テレビの電源ボタンを押した。


 予想していたことだが、テレビを消すと、しんと静まり返る。


 しかも今度はあんな番組を見たせいで、互いに気まずい。


 とりあえず、奈津美はさっきと同じように座った。


 何か、何でもいいから喋らないと。


 そう思うが、そうやって考えてしまうと、尚更何も思い浮かばなかった。