「どうしよう……」

 旬は頭を抱え込む。


 まさか、奈津美がそんな風に思っていたなんて、予想もしていなかった。


 ……本当の事情の方が、旬にとって予想できないことではあるが。


「謝ったらええやん。仕事終わってからでも会いに行って」

 浩平が軽くそう言った。


「そうですよね……それしかないですよね。でも、コウさん」


「何や?」


「あくまで仕事終わってからなんですね」


「当たり前やろ。今すぐにでも行きたかったら行ってもええけどな。一応、俺にもバイトのクビをどないするかって権限はあるんやで?」

 浩平はさらりと言い、さり気なく、この店の次期店長の権限を振りかざす。


「……ですよね」

 旬は大人しく引き下がった。


 どちらを優先するか、それは勿論奈津美なのだが、バイトをクビになってまで会いに行ったりすると、それこそ奈津美に見損なわれてしまいそうだ。


 結局は奈津美のために、旬はバイトを終えてから奈津美に会いに行こうと決めた。