それから朝食を済ませ、旬をバイトに見送ったのだが、やはり、旬はどこか納得しきれない、といった表情を浮かべたままだった。


 流石に気になり、胸の中のもやもやとしたものが消えない奈津美は、相談も兼ねてカオルに電話したのだ。



 事情を話し、カオルからどのように返ってくるか、それは何となく予想はしていた。そして実際、ほぼ予想通りに言われてしまった。




「奈津美さぁ。正直に言えば良かったんじゃない。言えばそんなややこしいことにならなかったでしょ」

 カオルは更に続けてそう言った。


「……だって、太ったって思われるのが嫌だったんだもん」

 奈津美はやっと言い返す。


「いいじゃない。バレたって。ていうか、旬君も気付いてないんならそんなに気にしてないってことでしょ。ていうか、そもそも奈津美、言うほど太ってないし」


「太ったの! このこと旬に言ったら絶対そういう風に見られるじゃない」


 言わなければ、気づかれないまま、やり過ごせるかもしれない。

 しかし、言ってしまうと、意識されて余計に太って見られてしまう。奈津美はそれが嫌なのだ。


 それをカオルに言うと、


「言わないでやり過ごせてないじゃない。それどころか、ややこしくしてるし」


 その通りのことを言われ、再び、奈津美は何も言えなくなってしまう。


「大体さぁ、奈津美は何が嫌なの? 別に太ったって、旬君は全然気にしないでしょ」


「……そうとは言い切れないじゃない。旬だって、若い男なのよ。体型が崩れていきつつある女より、若くてこれからが花って女の子の方がいいに決まってるじゃない」


 そう言うと、電話の向こうで深いため息が聞こえた。