旬は、はっきり言って、大雑把で、細かいことは気にしない。

 それは旬自身も自覚している。

 恐らく、そんな性格もあって、歯ブラシのことも気にならないのだろう。


 しかし、奈津美はその逆で、几帳面で細かいことが気になるような性格だ。


 それを考えると、今更ながら、奈津美もダメなのではないかと思う。なぜバレてしまったか、それは定かではないが……


 でも、キスが平気なら、歯ブラシだって平気なんじゃないのか……


 そう思った時、ふと旬の頭に引っかかる。


 昨夜、奈津美はキスまでは普通にいつも通りにしていた。

 今朝だってそうだ。


 それなのに、昨夜、奈津美に触れようとしたら『触らないで』と言われ、今朝も、奈津美を抱き寄せようとしたら、さり気なく突き放された。


 何でキスはできて、抱きしめたり、触れることはダメなのか。

 今更になって、旬は不思議に思った。



「つうか、沖田。お前、それが問題なんじゃねえのかよ」

 大川に言われ、旬は、はっと我に返る。


「え?」

 意味が分からず尋ね返すした。


「内容はともかく、そうやって何かしたんじゃないかって心当たりが何個も出てくるとこだよ。その時点でお前に問題あるってことだろうが」


「えっ……」

 旬は言葉に詰まってしまった。


 言われてしまうと、確かにそうだ。


 奈津美が旬に対して何か思っているのには間違いない。

 そして、旬にはその原因の心当たりがある。むしろ、ありすぎる。


 これは明らかに旬に原因があるとしか思えない状態だ。


「別れ話切り出されるのも時間の問題かもな」

 どんどん悪い方に考えてしまう旬に、大川がトドメの一言を口にする。


「そんなあ……」

 旬は大川の言ったことを真に受けてショックを受ける。


 もし冗談でも、笑えない。本当のような気さえするのだ。


 旬は、ちゃんと否定できない自分が情けなかった。


「……沖田君。そんなに気になるんなら彼女さんに聞いてみなよ。ね?」

 美奈子は旬にそう言って慰める。


「うん……」

 旬は、力無く頷いた。