「ごめん……」

 奈津美はもう一度謝った。それ以外の言葉が思いつかない。


「いいって、ナツ。ナツの為だから我慢できるよ」

 旬は優しい声でそう言って、その声以上に優しく奈津美の頭を撫でて抱き寄せる。


 胸の痛みが更に強くなる。


 ごめんね、旬……これも旬の為だから。


 そう奈津美は心の中で呟いた。


「じゃ、おやすみ」

 旬の腕が動き奈津美の体に巻きついてくる。


 そしてその手はそのまま奈津美のパジャマの裾から入ってこようとする。


「やっ……」

 奈津美はとっさに旬の手首を掴んだ。


「ナツ?」

 手を掴まれ、旬は不思議そうな顔をする。


 当たり前だ。

 いつも、何もせずに寝る時は旬は奈津美のパジャマの中に手を入れて素肌に触れながら眠る。

 奈津美も、別にそれは嫌ではないから、そのまま眠る。


 しかし、今日はそういうわけにはいかない。


 旬に触られたら、バレてしまうかもしれない。


「ナツ? どしたの? 何か今日、変じゃない?」

 流石に旬に気付かれてしまった。


「な……何でもないよ?」

 奈津美は必死に隠そうとする。


「ホントに?」


「うん」


「……ならいいけど」

 そう言って、旬は止められた手を動かす。


 あ……


 旬の手が、奈津美の脇腹に触れた。


「さ……触らないで!」

 奈津美は大きな声を上げて体を起こした。