二人は急いで外に出て、奈津美は旬の姿を探した。


「ナツ!」

 旬の声がして、奈津美は振り向いた。

 先にあっちの方が気付いたらしい。


「ナツぅ〜!」

 奈津美が旬の姿をはっきりと確認する前に、奈津美は抱きつかれた。


「しゅ……旬! ちょっと……」

 側にカオルもいるこの状況で、しかも会社のまん前でこんなことをされてはたまらない。


「今日さー、居酒屋の方のバイトだったんだけど、他の人に代わってくれって言われて喜んで変わったんだー」

 旬は、場所や状況なんて全く気にせずに、奈津美を抱き締めたまま、嬉々として話す。


「だから今夜はナツと一緒ー! 今夜は寝かさないぞー」

 きわどいことを口にしながら、旬は奈津美に頬ずりする。


「ちょ……! 旬! 何言って……」

 奈津美は真っ赤になって、旬の腕を解こうとする。


「……あれ」

 旬の視線が奈津美から離れてカオルにいく。やっとカオルの存在に気付いたらしい。

 勿論、カオルの方は全部見ていた。


「ナツ、知り合いの人?」

 今更になって旬は奈津美に尋ねる。


「うん……友達。同じ職場の……」

 奈津美はカオルの視線を恥ずかしく思いながら答えた。


「初めまして。三枝カオルです」

 カオルの方は全く気にしない様子で笑顔を作り、旬に対して自己紹介をする。


「初めまして。ナツの彼氏の沖田旬です。ナツがいつもお世話になってます」

 旬の方も、カオルにつられたように笑顔で自己紹介をした。


「いいえ。こちらこそ。……奈津美の彼氏君ね。話はよく聞いてるわ」

 クスクスと笑いながらカオルが返す。


「え?」


「ちょ……カオル!」

 余計なことを言うカオルに対し、奈津美は顔を赤くした。