「大丈夫か?」
「…うん。」
「ゼリーとか買ってきたけど食べる?」
「え?…お金…」
「お金はいい。」
俺が勝手に買ってきただけだから。
逆にお金請求したらおかしいから。
「…ありがとう…」
「なんか食べるか?」
布団にくるまった一花は少し考えて首を横に振った。
「…風邪の時は本当に何も食べたくない。」
風邪引いた時は本当に重症化するんだな…
「なんかすることとかある?」
「…何も…ない。
…何もしなくていいから…そばにいて…」
瞼が重いのか徐々に目を閉ざしていく一花。
一花の手に触れるとかなり熱い。
「…そばにいて…」
俺の手を握りしめて一花は眠りについてしまった。
いつも風邪ひいた時はこんな感じで弱ってしまうのかな?
親にも頼らず1人で…
「……っ…」
なにか夢でも見ているのか俺の手を握る一花の手の力が強くなった。
「…いか、…ないでっ…
…ゆ…っ…た…」
悪い夢でもみてるのか…?
「…やだっ…
…ゆう、た…」
…ゆうた…
前に言ってた大切な人…かな?
…この写真に写っている男性…
夢にまで出てくるほど、好きなんだな…
「…嫌だな…」
一花を取られるみたいで…嫌だな…
「…俺を見てよ、一花…」
一花の寝顔を見ながら頭を撫でる。
俺だけを見て欲しい、なんて今の一花には言えない。
…そんな気がした。
【笹川将也side END】

【宮川一花side】
…これは、夢だ。
見たくなんか、ない。
「勇太…」
だってこれは…
勇太が死んじゃうところだもん…
未だに勇太の死を受け入れられていない私には到底見ることが出来ない。
「一花」
後ろから声がして振り返る。
…けど誰もいない。
気の所為…?

「ー…ん…」
次に目を覚まして目に入ったのは見慣れた自分の部屋の天井。
ゆっくり顔を動かして周りを見る。
「…将也…?」
そういえば、お見舞いに来てくれたんだっけ?
さっきほどだるくは無い。
「…ん…一花?」
「おはよう…将也。」
そろそろ、勇太の死を受け入れて違う恋に進むのもあり、かなあ…
多分夢に勇太が出てきたのはいつまでも考えてちゃダメって言う勇太の忠告だ。
…多分…
「気分どう?」
「お陰様で。」
「それは良かった。」
「冷えピタ貼ってくれたの将也でしょ?」
寝る前はつけてなかったもん私。
「そう、早く下がればいいなと思ってつけた。」
「ありがとう。」
将也の優しさにた惹かれつつあるのは確かだ。
けど…勇太との関係をキッパリしてから次に進みたい。
…なんて思うのはわがままなのかなあ…