「…星…?」
「これは俺のわがままだけど…」
将也のわがまま…?
「俺実は夜景より星空が好きなんだ。」
「…」
「とは言っても星が好きなだけで星座とかは一切分からないけど…」
恥ずかしそうに頭をかく将也。
不思議と勇太と重ねてしまう。
『星のことは分からないけど綺麗だから一緒に見たかったんだ。』
恥ずかしそうに笑っていた勇太を思い出してしまう。
…ダメだ。
将也は真剣に私を想ってくれているのに私は…
勇太が亡くなったあの事故から1歩も前に進めていない。
真剣な人に失礼すぎる…
「…もう…あの正面の星から上に行った明るい星が北極星。」
「え?」
「そしてその北極星から右上に行って離れている星が北斗七星。」
勇太が星好きだったくせに全く知らないって言うから私が勉強して勇太に教えていた星の知識。
まさか今更誰かに教えることになるとは。
「一花、詳しいな…」
「前に勉強してたことあるから。」
…あの事故の時も。
私と勇太で天の川を…見に行く予定だった。
望遠鏡と三脚を持って…重いっていいながら綺麗な星空を見るために山に向かっている途中。
住宅街の見通しの悪い角から一時停止を無視した車が私達に突っ込んできた。
『一花!!!』
勇太も私も車に撥ねられた。
撥ねられるその瞬間、勇太の腕の中に守られた私。
私が今、生きてるのは勇太が全身で私を守ってくれたからー…
「一花?」
…今目の前にいる将也は勇太にどことなく似ている。
いや、私の未練が将也を勇太に見せているのかもしれない。
「…知識なら任せて。」
「…一花。」
「ある程度の知識なら頭に入ってる。」
「一花…」
「星のことでも、他のことでも。」
「…一花…」
下を向いていた私は将也の手によって無理やり顔を上に上げられた。
「…泣いてるよ。」
…?
自分の頬に手をやると指先が濡れた。
「…え?」
もしかして私、泣いてる?
「…あ、れ…なんで…」
「…一花…」
…勇太だ。
勇太のことを考えてしまったから…
…あまり考えないようにしてたのに…
「…そういえば将也…」
「ん?」
「お家に連絡…」
「ああ、大丈夫。」
将也は優しく微笑んで私の手を握った。
将也の笑顔を見て安心した私は何も考えずにまた自分のアパートまで送って貰うことになった。
【宮川一花side END】