「…一花」
「ん?」
私は布団から立ち上がってキッチンへ向かう。
だいぶ頭もハッキリしているからかいつも通りの生活を送ることが出来る。
今更だけど将也にお茶を出そうと準備を進める。
「…俺と…付き合って欲しい。」
「…」
「…今言うべきじゃないことは分かってる。
だけど俺は、一花が好きだから…
守りたいと思った存在だから…」
…守りたい、か…
そう言って勇太も…
言葉通り私を守って命を落としてしまった。
…私なんかの、ために…
「…守りたいって、言わないで…」
「?」
将也はきょとんとしている。
でも…
これ以上守りたいなんて聞きたくない。
「私は…守られなくても生きていける…」
勇太が死んでから。
今みたいに一人暮らしして親元を離れているんだ。
…自分自身を、守るために…
実家にいたら私が壊れちゃう気がして怖かった。
私は、私であるためにあの家を離れた。
…少しでも勇太から離れたかった。
「…守りたいなんて、言わないで…っ」
もし私を守っていたら。
将也まで居なくなってしまう気がした。
「…一花。」
将也の真っ直ぐな眼差し。
…全てを見透かされてるみたいで怖くて。
私は目を伏せた。
「…でも」
「ん?」
実際、将也に惹かれつつあるのは事実だ。
ただ、今の私じゃダメな気がして…
「…一花…
今すぐ返事が欲しいわけじゃないから。そんなに悩まなくていいよ。」

ここで甘えたらダメだ。
しっかり、私の気持ちを伝えないと…
「…今すぐ、付き合って欲しいのは…付き合って欲しいけど…
一花の気持ちが俺に向いてなくてもいい。
もし、俺のことが好きになったら、その時改めて伝えてくれたらいい。」
…なんかそれって…
将也を利用してるみたい…
「そんなの、ダメだよ。」
「それくらい、俺は一花が好きなんだ。」
こんなに無愛想で。
こんなに優柔不断な私が…
「形から入る恋だってあるだろ?」
「…うん。」
「俺の事、好きにさせてみせる。」
…惹かれつつあるけど、これが恋になるかは分からない。
でも、この人なら。
勇太のことを話しても大丈夫な気がしてきた。
将也なら、私を受け入れてくれるのかなって。
私のわがままでしかないこの気持ち。
「…余程私のことが好きなんだね。」
「当たり前だ。俺は初めてあの店で会った時、一目惚れしたんだから。」
「…ふふっ…」
自然と笑うことが出来る。
自然と笑うなんて出来なくなったと思ってたけど、まだ笑えるみたい。
ねえ勇太…
私も、そろそろ前にた進まなきダメだね。
将也にかけてみることにするよ。