「桑嶋さんっ!」


声の方を振り向くと、目の前に彼が現れ...


―――ドスンっ!


派手に転んだ。

目をゆっくりと開けると、うっすらと白いジャージが見えた。

そして、声が聞こえてきた。


「桑嶋さん、マジで鈍いな」

「あわっ!」


私は飛び起きて回せるだけ首を回した。

そしたら、彼の斜め左後方にサッカーボールがあった。


「すみませーん!」


サッカー部の1年生とおぼしき人が走ってやって来た。


「シュートの練習していたら外してしまい、すみませんでした。では、失礼します!」


ボールを拾い上げると、彼はがっつりボールを手で持ちながら、自分の持ち場へと帰っていった。


「ありゃ、上達しねえわ」


...同感。

って、それどころではない。

彼はのそのそと起き上がり、ジャージについた土をパンパンと叩いて払っていた。