キミと、光の彼方へ。

「いたっ...」

「どこ見て歩いてんだよブス」

「ほんとほんと。ブスはかえれっつうの」


カップルとすれ違い様にぶつかり、罵声を浴びせられた。

ブスか...。

遂に言われたよ。

自覚はしてたけど、実際どんな状況で、どんな人に言われてもこの言葉は傷つく。

はぁ...。

せっかく調子を取り戻して来たっていうのに、またブルーになってしまった。

地面に手を着き、よいしょと立ち上がると、そこに広がっていたのは、蟻の行列がいくつも合わさって出来たような人混みだった。

たらーっと汗が額を伝って首筋に流れる。

脈拍が上がる。

胸を押さえても激しい鼓動は治まらない。


「どう...しよ...」


私は自分の帰る道が分からなくなっていた。


昔から私は方向音痴で、父か母が必ず手を繋いでくれていた。

でも、ある年の夏祭り、父と2人で来て、父が目を離した隙に、食べたかったりんご飴の出店に走っていき、帰り道が分からなくなって迷子になった。

幸いにも、巡回していたお巡りさんが保護してくれたから、すぐに父とも再会出来た。

けれど、その時から、私は迷子になるという恐怖が芽生え、父や母の手を絶対に離さないって決めたのだ。

そして、それは姉になってから余計に意識するようになった。

何があっても妹の手は離さない。

妹に私と同じ思いをさせたくない。

だから、いつもいつも私は手を繋ぐのだ。

そうしていれば安心できるから。

誰かと繋がっているという安心感を、私は無意識のうちに求めてしまっているんだ。

迷子エピソードを思い出しながらひたすら直進してきたけど、明らかに違う方向に来てしまった。

スマホで何回も砂良に電話をかけているけど、気づいていないよう。

ということは、まだ砂汐奈が粘っていてそれを監視しているはず。

あそこに戻れればきっといる。

砂汐奈も砂良も琉太くんもいる。

いるんだ......。