誰か......

誰か......

誰か......

誰か......

助けて......


幼い頃、私は家から見える海に入り、そこで溺れた。

泳げない私は必死にばた足をして浮遊しようとしても、全然出来なかった。

助けを呼ぼうにも呼べない。

顔を上げようにも上げられない。

私は手を伸ばした。

手を伸ばせば、誰かが掴んでくれると信じて。

水が冷たく、私の体温が奪われていく。

だんだんと意識が遠退いて来た。

私はこのまま海の底に沈んでしまうのかな。

人魚姫のように泡になって消えて、私は海に溶けていくのかな。

ぼんやりとした意識の中で、誰かが何かを言っている。


「今、助けるから、俺が絶対に助けるから、死ぬなよ!」


そう言われて安心したのか、私の意識はどんどん遠くなり、眠ってしまった。

私はきっとキミに抱えられていたんだ。

目覚めた時にキミの笑顔が見えてホッとして、私はキミに淡い感情を抱いた。

それが恋というものだと気づくには、そんなに長い時間はかからなかった。

その日から、ずっとキミを見ていた。

いや、その前からずっとずっとキミを見ていた。

キミを好きだという気持ちは、

いくら波が押し寄せてきても変わらない。

どんなに強い風が吹いても変わらない。

嵐がやって来ても変わらない。

そう思っていた。

そう信じていた。

変化を求めず、ただキミの後を着いて船を漕いで来たんだ。