そしてカイは、私の手を握った。

「結婚してほしいんだ。日本には帰らないで、一生、僕の側にいてほしい。」

真っすぐな瞳。

本当だったら、ここで”うん”と言えれば、よかったのに。


「カイには、婚約者がいるでしょう?」

「親が決めた人だよ。もう親はいない。婚約は解消された。」

「それでも、私にはルシッカの王妃には、なれないお姫様じゃないんだもの。」

「大丈夫だよ。僕が支えるから。それに、王妃の役割は、皇帝である僕を愛する事だ。」

「カイは、恋に夢中になっているから、周りが見えないのよ。」

カイは、そっと手を放した。

「僕は諦めない。涼花が僕と結婚してくれないのなら、一生独身でいたっていい。」

その揺るぎない瞳に、私は胸が締め付けられた。


「涼花。これからは、何でも不安な事教えて。僕が、その不安を取り除くよ。」

「……不安なんてないわ。最初から、私にはあなたの相手になれる資格なんて、ないのだから。」

するとカイは、私にキスをした。

「これでも?」

「カイ……」

私達は花園の中、何度も何度も、唇を重ねた。